ネット先進国のアメリカでは、シニアのネット人口が1300万人(ネット人口の16パーセント)に上る。そして、ネットを縦横に活用して情報収集し、積極的な消費行動をとる先進的な「スマートシニア」が増加している。  このスマートシニアは、 ・日に一度、毎週10時間以上ネットを使う ・若い世代よりネット通販に積極的である ・市場で自分の声を積極的に発信する という特徴がアメリカでの調査でわかっている。  わが国でもこのようなスマートシニアが増えている。今後、このスマートシニアは先駆的な消費者として多数の一般シニアの消費行動に影響を与え、アクティブシニア市場をリードしていくと推察される。  この小論は、9年前のもので、内容は、いまにしてみれば稚拙なものですが、その時点での予感を述べたものでした。  それから9年経ったいま、現実はどうなったでしょうか。  たとえば、何か商品を購入する場合は、ブロードバンド環境に接続されたパソコンで、「価格ドットコム」のような価格比較サイトを使い、探している商品の仕様と価格とを比較して、自分の求めている条件に合うものを購入して楽しむ。また、いくつかの旅行サイトを使ってお気に入りの旅行商品を選択し、自分の条件に最も合うものを購入し、旅行に行く。あるいは、ネット上での多くの経済情報をもとに、ネット証券サイトで株の投資を自在に行なう。  このような「賢い消費者」としてのスマートシニアは、確実に増えたと思います。  スマートシニアが増えていくというのは、単にネットや携帯電話などのIT機器を活用して情報収集するシニアが増えていくということではありません。IT機器を活用して情報収集力が高まった人が増えると、そうした人たちが先駆的な消費者として多数の一般シニアの消費行動に影響を与えていきます。その結果、IT機器を使わない人たちでも、商品に対する情報感度が高まり、いままで以上に情報収集に注力するようになるのです。  つまり、「賢い年配の消費者=スマートシニア」が、どんどん増えているのです。そして、重要なことは、こうしたスマートシニアは、今後ますます増えていくということです。  なぜなら、現時点の60代以上の人たちよりも、さらに情報を使いこなす能力の高い団塊世代を中心とした次の世代が、シニア層への仲間入りをするからです。21世紀は、スマートシニアの時代を迎えるのです。  では、スマートシニアの時代において、商品やサービスの提供者である企業は、どうならなければいけないのでしょうか。その答えは、「企業は、ますます賢くなる消費者よりも、さらに賢くならなければいけない」ということです。 「賢い消費者」の期待に応える サービスや商品を提供できるか  たとえば、電化製品を買う場合に、たとえ量販店に行くとしても、事前にネットで商品仕様をよく調べ、価格も比較したうえで、店に足を運ぶ人が増えています。こういう買い手が相手の場合、買い手の質問に店員がきちんと答えられないと、その店の信頼度は下がることになります。  ただ、ここで重要なのは、その場で顧客の質問すべてに答えられることでは必ずしもありません。もちろん、店員がその場できちんと答えられるに越したことはありません。しかし、仮にその場で答えられなくても、「お客様からいただいた質問は、○○に関するご質問ですね。この質問については、○月×日までに、担当の△△より、必ず回答させていただきます」というような対応で、顧客の「信頼を損ねないこと」が何よりも大切です。  サービス提供者が、消費者よりも、さらに賢くならなければいけないという意味は、いかなる場合でも、顧客の信頼を損ねず、顧客の期待以上のものを提供できる「対応力」を持つということです。  一方、スマートシニアという意味は、賢く消費する年配者というだけではありません。 「スマート(smart)」とは、もともと「賢い」という意味ですが、「知的で格好がよい」というニュアンスも含まれます。したがってスマートシニアには「賢く、知的で格好よく老後を生きる年配者」という意味合いを込めています。スマートシニアとは、従来のいわゆる社会的弱者としての 「高齢者」のイメージとは異なり、「賢く、知的で格好よく老後を生きる21世紀型シニア」のビジョンです。 活躍の場を求めるシニアの増加が 新たなビジネスチャンスに  たとえば、会社は退職しても何らかの形で働き続けたい、あるいは、社会に貢献したい、社会にかかわっていたいという意志のある人も最近は増えています。  このような積極的な生き方を志向する人に対して、その人のキャリアを活かした活躍の場の提供や人材派遣などの道筋づくりも求められていくでしょう。現に首都圏のある企業では、退職ビジネスマンや子育てを終了した主婦を対象とした起業支援を、自社のサービス分野を題材に実際に行なおうとしています。  こうした種類の活動は、従来、その投資効果が見えにくく、企業に敬遠される傾向が強いものです。しかし、この企業の場合、このような起業支援に取り組むことが競合他社との差別化になり、売上げアップや新規顧客の拡大に結びつくと理由づけるものです。  こうした活動は、情報活用能力が不足している、あるいは社会参加のスキルが不足しているシニアの自立を支援することになります。このようなシニアの「自立支援」が、これからの企業に求められていくと同時に、それは新たなビジネスチャンスを生み出す契機にもなるのです。